夫婦善哉
990円(税込)
2022-11-28
八住利雄、53歳のときのシナリオ。同じ年に書いた「浮草日記」と併せて、毎日映画コンクール脚本賞を受賞。「夫婦善哉」は大ヒットし興行としても大成功をおさめ、「おばはん、頼りにしてまっせ」は流行語となった。
大阪弁のセリフが印象的。大阪の薬問屋の長男として生まれた氏ならではの純粋な大阪弁を読むことができる。主演の森繁久彌は自堕落な男。愛人の淡島千景がなんとか立ち直らせようとテキパキ動きまわるが、男はどこまでもぐうたらで功を奏さない。自堕落さにまとわりつくように漂う男と女の愛が、物語のカタルシスを排除する。結局、男はぐうたらなままで成長しない。そこがいい。言葉ではうまく説明のつかない愛のリアリティが浮かび上がる。
底本:「八住利雄 人とシナリオ」(シナリオ作家協会、1992年刊)