オレンジロード急行
990円(税込)
2022-05-12
第三回城戸賞入賞作。城戸賞が始まって以来、三年目にしてようやくでた入賞作品であり(収録シナリオは応募作)、数カ月後に大森一樹自ら監督することになった。このとき、中岡京平の「夏の栄光」(「帰らざる日々」として映画化)も同時入賞している。同賞の選考を終えて、新藤兼人は次のように書いている。
「老夫婦の車の乗り逃げという着想が、このドラマを生き生きとさせている。この作者もひどく映画をおもしろがっている。それはたのしい。海賊放送と車の乗り逃げがほどよく対応して、ドラマはじぐざぐに進行してゆくのだが、あれよあれよといううちに、みるものをおしながしてゆく話術も巧みである。次々と重ねられるとぼけたシチュエーションはたんなる喜劇ではない。ここでもイメージはものすごくはんらんする。
若さのよさというものは、怖れをしらぬ無鉄砲さである。不用心で、八方破れで、大胆不敵、ということが若さの特権である。不用心で、めくらめっぽう、あふれる好奇心、というものが、あるときひとつの創作を生むのである。ベテランは、用心深く、なにごとも常識的で、事前に危険をふせぐ能力をもっているからベテランと呼ばれるのであるが、これは失敗しない代り、未知へ足をふみこむ勇気はもたない。この作者はこのことを考えさせる。」