第五福竜丸
990円(税込)
2019-03-15
1954年、アメリカが無通告で実施したビキニ環礁の水爆実験で、第五福竜丸(第五福龍丸)は「死の灰」を浴びた。太平洋上で乗組員23人全員が2〜3シーベルトの放射能にさらされたのである。世界にさきがけて「原爆の子」で放射能の恐怖を描いた新藤兼人が、何度かの製作中止の危機にあいながらも、近代映画協会で自主製作した。新藤はシナリオを書くにあたって、当時、次のように書いている。
「なまなましい事実をシナリオ化することはむずかしい。事実に引ずられて真実が薄れ勝ちになるからだ。ましてこの福竜丸の場合のように多くの人間が多様な立場で事件にタッチしている複雑な問題では、一応はその関係者に会わねばならない。記録だけを頼りにシナリオは書けない。
静岡県庁、静大、焼津港とその周辺、愛知県三河三谷。東京では、東大清水外科、ラジオアイソトープ研究所、東大附属病院、東京第一病院、厚生省関係、読売、毎日、朝日の記者。千葉の化研、大阪市立大、などを歩いた。私を中心にスタッフ、五、六名が絶えず動いた。会って話をきいた人は六十名をこえた。鮪漁業のことも、放射能のことも、原子科学の常識も、私たちには一から勉強する必要があった。(後略)」
1959年/近代映画協会/監督:新藤兼人/主演:宇野重吉、乙羽信子、小沢栄太郎、千田是也